5代目レガシィ開発者からvol.26
『装備 ATシフトノブ』
2010.2.08
こんにちは。今回はシャシー設計部の八木澤から新型レガシィのATシフトノブ開発秘話をお届けします。

『ヤギ、お前レガシィやれ』。
当時担当していたインプレッサの立ち上がりを待たず、白紙状態のレガシィのATシフトノブ開発を言い渡されました。
私がレガシィの担当になったときには、既に周辺部品の開発は進んでおり、デザイナーからは、「今回のインテリアデザインは直線基調を多く取り入れているため、ATシフトノブもそれにあわせたデザインにしたい」と要望がありました。
“直線基調のインテリアにあわせたデザイン”=角々しいカタチのシフトノブにすることになります。しかし、握った時の感触を考えると、丸みを帯びているほうが良いだろうと我々は考えていたので、我々の主張とデザイナーとで真っ向から意見が対立。ここでいつもなら中間案を模索しますが、今回はデザイナーも譲りません。その勢いに押され、「まずはやりたい形をスケッチしてください」と伝えたことが、険しく長い道のりの始まりでした。
デザイナーからのスケッチを基に、設計、製造、性能や法規の適合性を検討し、クレイモデルや可動モデルを作製しました。しかし、インテリアに溶け込み、かつ操作フィールのよいシフトノブ形状の両立解を見出すことは簡単ではありません。開発初期段階の社内関係者たちからの評価では、『硬い』、『痛い』、『かっこ悪い』、『デカい』など散々な結果となり、検討し直しです。
開発課題を進捗する会議では、なかなか進まない我々のシフトノブは、いつしかプロジェクトチーム全員が知る、まさに難航部品となりました。
造りこんでいく上での制約は、取り出せばキリがないのですが、例えば、コンソールからの“突出感”を無くすこと、男性が操作してもコンソールに手を擦らないこと、女性でもボタンに指が届き指先でも操作ができる重さにすること、シフト誤操作に繋がらないよう、ボタン操作力は軽くし過ぎないこと、デザイン上、操作ボタンの位置はノブの上や横を避けることなどなど、とにかく細かい点まで両者とも妥協しないため、事態に収拾がつかなくなっていました。
それでもデザイナーからは『やり抜く!』との強い決意。お互いに思いは減速することがありませんでした。こうして何度も何度も議論を重ねていくうちに、いつしか、「我々はこの問題を如何に解決できるか?解決しよう!素晴らしいモノを造ろう!」というひとつのゴールに向かい一丸となっていきました。(この頃から“グリップに懸ける男たち”という応援とも冷かしともとれる言葉が周囲から聞こえてきたほどでした)。
様々な検討をしていく中で、ポイントとなったキーワードは “掌(タナゴコロ=てのひら)”です。シフトノブの微妙な角R(円弧の大きさ)を変化させれば『“タナゴコロ”の納まりが…』、面のハリ(膨らみ)を変えれば『“タナゴコロ”が…』、いつしか“タナゴコロ” を意識するようになりました。掌の納まる位置を安定させられるシフトノブの形状とすることでば、上、横、斜めという握り方のパターンを絞り込め、実際に走りながらシフトノブの操作性を評価した時に、とうとうある種の傾向を見出すことに成功しました。その成果を反映させたシフトノブで再度、中期の社内での評価機会を設けた時には、役職、年齢、性別問わず、また、社員ばかりではなく、シフトノブを製造する部品メーカーの人たちにも協力を仰いで、データや意見を収集、分析し、形状のリファインを繰り返し繰り返し行いました。
今回は構成部品が他の車種よりも多いため、いつも以上に関係部署と綿密に検討を重ね、そして念入りかつ慎重に造り込みをしていった結果、ようやく皆様の前にお披露目する日を迎えました。満足のいくシフトノブを造ることが出来たと自負しています。
皆さんには是非、新型レガシィに試乗いただき、エンジンに火を入れ、レバーをPからDレンジに入れるときに、我々の思いが詰まったシフトノブの“タナゴコロの納まり”を感じて頂ければと思います。




