本格的に自転車に乗り始めたきっかけは、少年時代に読んだマンガの影響だった。それから自転車に乗り続けて、現在は自転車専門誌「バイシクルクラブ」の編集長に。その岩田淳雄さんが考える「子供と自転車」とは――。
リレーコラム#04 岩田 淳雄さん「自転車に乗り始めて責任感が身についた」

自転車で出かけたら、自分でなんとかしなくてはいけない
「子どものころから自転車に乗っていますが、それによって“人のせいにしないこと”を学んだような気がします」
少年時代はどちらかといえばインドア派だったという岩田さん。外で遊ぶよりも本を読むのが好きな子どもだったという。
「でも生徒会長をつとめたり、率先して遊びのリーダーシップをとったり。“真面目なガキ大将”という感じだったと思いますよ。親や先生の言うこともまあ守っていましたし。でも自転車に関しては本当に乗りたくて、ねだって買ってもらったものでした」
はじめての自転車は小学5年生のとき。自転車で日本一周を目指す少年マンガに影響を受けて、どうしても欲しかったドロップハンドルの自転車を手に入れた。それからは大学生になるまでサイクリングに夢中になっていったとのことです。

>>中学1年生のときの岩田さん。近所の自転車ショップで自転車旅行用にカスタムしていた。
「高校生くらいになると泊りがけで旅に出ることもあったのですが、厳しいルートもあるし、天候が良くないこともある。走り出すと楽しいことだけじゃないんですよ。でも自分がやりたくて始めたことですし、文句は言えない。どれだけ自転車に乗るのが大変でも、一度出かけた以上は自分で何とかしなくてはいけない。責任感も身についたと思います」
「自分でなんとかする」と聞けば、つい「ツラくても走り切る」「トラブルがあった場合は自分で切り抜ける」という部分を想像しがちだ。しかし、この言葉には「自分で自分を守る」ことも含まれているのを忘れてはいけない。無事に帰ってくるまでが楽しいサイクリングなのだ。

>>自転車で旅に出かけると、こんな素敵な景色にも出会える!
「性格的に危ないことはあまりしないタイプですが、当時から安全面に関しては気をつけていたと思います。整備はしっかりしていましたし、下り坂ではあまりスピードを出さなかった。自転車は楽しい乗り物ですが、ケガをするし、最悪の場合死ぬこともあります。
安全なサイクリングのためにはルールをしっかり守って乗ることが大切ですよ。
安全に乗ることができれば、自転車は楽しい。"身体拡張機関"といつも言っているのですが、それは、自転車は自分の能力を伸ばしていくものだと思います。自転車に乗り続けていくことで、いつの間にか速く走れるようになっていますし、これまで行けなかったような遠くまで走れるようにもなります。できなかったことができる、それを楽しむことができるのです」
自転車は長く楽しめる趣味
少年時代に自転車の楽しさを知った岩田さん。自転車専門雑誌の編集の仕事をしながら、今もなお自転車を楽しむ日々を送る。
「自分が子どものころは、あまり自転車にも種類がなかったのですが、今はいろんなジャンルの自転車があります。キックバイクやジュニアバイクなど、身体が小さくても乗れるものもあります。それを考えれば、子どもから大人になっても本当に長く楽しめる趣味になる可能性がありますね」

>>高校生の時に手に入れた自転車。今もピカピカに磨いて大切に保管している。
少年時代の楽しかった思い出とともに、当時の自転車を今も持っている岩田さん。乗ることだけではなく、モノとして自転車を所有する楽しさも味わえる。自転車を通じてモノを大切にすることも学べるかもしれない。

岩田淳雄(いわた あつお)
1961年、愛知県生まれ。自動車、オートバイ、自転車など、乗り物を扱う雑誌を担当し、2014年から自転車専門雑誌『バイシクルクラブ』の編集長に就任する。