一年中、四季を通して見どころが多い街、京都。中でも紅葉が美しい秋は特に人気のある季節です。レンタル自転車を使って秋の京都を巡ってみました(全2回)
レンタルe-BIKEで愉しむ京都・紅葉ライド 後編

太古の昔から信仰を集める松尾大社
前回ランチした山田精油から約20分、桂川を北上すると松尾大社に到着します。本殿の背後の山頂近くに「磐座(いわくら)」と呼ばれる岩があり、太古の昔からこの地に住む人々が山の神としてこの岩を信仰の対象としており、その山の名前「松尾山」が名前の由来。京都にあって、最古の神社のひとつです。

桂川沿いにある一の鳥居から参道を進むと、本殿に続く二の鳥居が見えてきます。近くの駐輪場に自転車を停めて参拝します。

二の鳥居をくぐると江戸時代初期に建造されたといわれる楼門が見えてきます。楼門の裏手には真っ赤に染まった紅葉があり、白壁とのコントラストが見事でした。

松尾大社は酒造りの神様としても知られる神社です。境内の一角には神事には欠かせない日本酒の資料館があります。

資料館には松尾大社と酒に関する歴史だけではなく、酒造りの工程などが展示してあります。神話には松尾山に集まった八百万の神々をもてなすため、嵐山の米や山の湧き水を使って酒を造り、山でとれた杉で作った器に注いでもてなしたとあります。所説ありますが、これらの話が中世以降に広まって、お酒を作る神様となったようです。

酒造り(醸造)の神様ということもあり、日本酒やビール、焼酎はもちろん、醤油や味噌等を扱う企業の飾り樽が奉納されています。全国の松尾神社の総本社でもある松尾大社は、紅葉だけではなく歴史を越えて神話にまで触れることができるスポットでした。

松尾大社を後にして、松尾山と桂川の間を北上します。ちょうど取材時は11月末。住宅地の中でも色づいた楓やもみじが点在しているので、撮影がてらひと息入れつつ走っていきます。

嵐山の南にある「虚空蔵法輪寺」も良く知られた紅葉スポットです。境内に電気電波の祖神として電電宮があり、電力、電気など電気関係者の無事故安全を祈願していることから、今はIT関係に携わる方も参拝に訪れるようです。広い参道の両脇のもみじが色づき、赤と青、両方の色合いが愉しめる京都でも数少ないスポットです。

参道の紅葉のトンネルの先には、真言宗系の寺院によく見られる多宝塔があります。多宝塔の付近は高台になっていて京都市街を一望できます。もう少したたずんでいたいところですが、まだまだ中間地点。先を急ぎます。

虚空蔵法輪寺から5分ほどで、京都観光おなじみのスポット渡月橋です。京都の有名な名所だけあって、ものすごい人出です。橋の両脇の歩道から人があふれてしまうほど。周辺スポットにも立ち寄る予定でしたが、大混雑の嵐山エリアはこのあたりにして、北側の嵯峨野を目指します。
静かで落ち着いた風情の嵯峨野

嵐山の北側は嵯峨野と呼ばれる地域です。有名な寺院のほか、竹林やトロッコ列車などが人気の観光スポットですが、嵐山に比べて静かで落ち着いた雰囲気が味わえる場所といえるでしょう。

天龍寺や野宮神社など立ち寄りたいスポットはたくさんあったのですが、後ろ髪をひかれる思いで、今回は渡月橋から約30分のところにある「化野(あだしの)念仏寺」に立ち寄りました。

境内に入ってすぐ、多くの石仏群が置かれた場所へ行き当たります。「西院(さい)の河原」と呼ばれる場所で、このお寺の代名詞的な風景です。8000以上もあるとされている石仏は、このあたりの無縁仏を集めたもの。何百年という歳月を経て無縁仏になった石仏を前にすると、歴史ある京都ならではの、なんとも言えない無常さを感じ取ることができます。

「化野念仏寺」の見所は石仏や真っ赤に染まる紅葉ですが、それに匹敵するくらい素晴らしいのが、竹林小径です。元々、嵯峨野は竹林が有名な地域ですが、「化野念仏寺」の竹林は格別な美しさがあることで知られています。

ちなみに「化野(あだしの)」の「あだし」とは「はかない」「むなしい」などの意味。街中の至るところでいのちの儚さを感じるスポットに出会える。これも大人の自転車旅の醍醐味でしょう。

そろそろ日が落ち始めたので、化野を後にして帰路に着くことにします。

その途中で見つけたのが、松尾大社近くの「ブルーオニオン」という喫茶店です。参拝帰りの観光客や地元の方々にも、長い間愛され続けている喫茶店です。多くのお客さんがオーダーするのが、京都のB級グルメとしても知られる「玉子サンド」。ふわふわの卵をしっとりとしたパンで挟んだ、ボリュームたっぷりの名物サンドイッチです。食べ応えはありつつ、柔らかい食感と優しい味わい。あっという間に平らげてしまいました。

今回は、主に桂川サイクリングロードを利用しました。一般的にサイクリングロードはクルマの通行や信号もないため走りやすいですが、特にここ桂川サイクリングロードは道幅が広く、整備が行き届いていて快適でしたので紹介させていただきます。
京都の南側、木津(泉大橋)から終点の嵐山の渡月橋まで全長45㎞整備されていて、大阪の淀川方面からも走って来やすいこともあり、関西のサイクリストにはおなじみのサイクリングコースです。
観光で自転車を利用する場合には、少し遠回りになることもありますが、ストレスなくスムーズに移動できる、サイクリングロードをおすすめします。

無事、サイクルベースあさひ洛西口店に戻ってきました。
e-Bikeは今回のような、長距離の観光ライドにはぴったりの自転車でした。自転車が自ら前にグングン前に進んでいくような感覚も新しくて、こいでてワクワクしっぱなしでした。皆さんも機会があれば是非e-Bikeの愉しさを体験してみてはいかがでしょうか?
- 協力:サイクルベースあさひ 洛西口店
- 取材・文/今 雄飛(こんゆうひ):ミラソル デポルテ代表。スポーツブランドのPR業務を行うかたわら、自転車、トライアスロン、アウトドア関連のライターとしても活動中。趣味はロングディスタンスのトライアスロン(IRONMAN台湾完走など)