2020年6月30日に改正された道路交通法(以下道交法)では、自転車のあおり運転にあたる「妨害運転」への罰則が新しく規定されました。コロナ禍によって自転車を利用する人が急増する中、自転車のルールやマナーを守ることがこれまで以上に求められています。そこで今回は改正された道交法を改めて学びながら、東京をぐるりと囲うように鎮座する五色不動(ごしきふどう)をめぐるツアーに出かけることにしました(第2回/全2回))。※コロナウイルスの感染を拡大させないために撮影、取材で守ったルールはこちら。
※前編はこちら。
自転車のあおり運転も罰則対象に。改正道交法を守って走る「五色不動めぐり」後編

赤、青、黄、白、黒の5つ。江戸を守護する五色不動とは?
「不動」とは不動明王(不動尊)のこと。全国で「お不動さん」として親しまれている仏像です。今回巡る五色不動は徳川三代将軍家光が江戸の鎮護を祈念して、不動尊を配置したとあります(諸説あり)。目黒、目白のように「目」と「色」で名づけられた不動尊が江戸城を囲うように配置されているのが特徴です。

①目黄不動 最勝寺(江戸川区)
②目黄不動 永久寺(台東区)
③目赤不動 南谷寺(文京区)
④目白不動 金乗院 (豊島区)
⑤目青不動 教学院(世田谷区)
⑥目黒不動 瀧泉寺(目黒区)
五色不動ですが目黄不動が二寺ありますので、今回は全部で6か所のお寺を回ります。
(目黄不動が安置されているお寺の数には諸説あります)
荒川沿いの目黄不動(最勝寺)からスタート
最初にシェアサイクルに乗って向かうのは目黄不動が安置されている「最勝寺」です。よく自転車で走る荒川サイクリングロードからも近い、昭和の風情がただよう下町です。最寄り駅はJR平井駅ですが、付近にサイクリングポートが近くにないため、隣の亀戸駅付近からスタートします。大きなターミナル駅でもポートが駅近くにない場合がありますので、利用する場合は事前にポートの場所をチェックしておいた方がスムーズです。

亀戸駅近くは一部、自転車専用道も完備されているほか、路側帯が広くかなり走りやすい環境でした。

目黄不動が安置される最勝寺の不動堂です。開山は729~766年の天保年間という歴史あるお寺です。

取材時はお堂の前には蓮がきれいに咲き誇り、まさに極楽といった風情。SUBARU CYCLE FAN CLUBの取材では寺社仏閣を巡ることも多いので、今後は読者の皆さんの健康と安全を祈念して、御朱印を集めることにしました。

残念なことに新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からお堂のお参りはできませんでしたが、御朱印はいただくことができました。

2つ目の目黄不動をお参りする前に、少しこのあたりを散策することにしました。周辺は昭和レトロな雰囲気が漂う街。街を走っていて見つけたJR平井駅前の「ワンモア」さんで朝食にしました。創業からおよそ50年、古くからこの地域で愛されてきた、近ごろあまり見かけない純喫茶です。

ミックスサンド(740円)はハム、卵、レタスのシンプルな具材をふわふわのパンでサンド。朝にピッタリの優しい口当たりでした。フレンチトースト(530円)は輪切りのレモンにより柑橘系のさわやかさが前面に出る、少し独特な味わいでした。
スカイツリーに自転車を返却し、もうひとつの目黄不動へ
直接次の目的地の「永久寺」に向かうと走行距離が少し長くなるため、4㎞ほどサイクリングしてスカイツリーの周辺で自転車を返却。電車でもうひとつの目黄不動を目指すことにしました。

走り始めてすぐにスカイツリーは見えていますが、走ってもなかなか近づけません・・・。本当に大きい!

JR平井駅から20分ほど走るとスカイツリーの近くに到着。その真下にあるサイクルポートに自転車を返却します。

返却も実に簡単。借りる際に入手した暗証番号を入力するだけです。

スカイツリーの最寄り駅、東京メトロ「押上駅」から次の目的地までは電車で約25分です。

二か所目の目黄不動が安置されているのが、東京メトロ「三ノ輪駅」から徒歩2分の永久寺です。先ほどの最勝寺とは違い都会の中のお寺でした。開山は14世紀の南北朝時代の頃だとか。交通量の多い街道沿いの立地ですが、ひっそりとしていて落ち着いた雰囲気の境内でした。担当の方がご不在で御朱印はいただけませんでしたが、参拝を済ませて次のお寺に向かいます。

三ノ輪駅から再び地下鉄に乗り約20分。東京メトロ「千駄木駅」に到着しました。この周辺は谷中、根津、千駄木の頭文字をとって「谷根千(やねせん)」と呼ばれる地域です。古き良き下町の雰囲気を残しつつ、おしゃれなカフェや雑貨屋などもある散歩コースとして人気のエリア。千駄木駅の近くのサイクリングポートから走りはじめて、目赤不動、目白不動と周ってJR高田馬場駅まで走り返却する予定です。

目赤不動が安置されている南谷寺までは、約1.5㎞なのでほんの数分で到着。全体的に「赤」を強くイメージさせるお堂周りでした。

右手に諸刃の剣を持ち、童子のような体型、後ろに不浄なものを焼き清める炎、迦楼羅炎(かるらえん)があるのが不動明王の大きな特徴です。目赤不動はお堂の中のかなり手前側に安置されているため、これらの特徴を目にしながら参拝することができます。

南谷寺は1615~24年の元和年間に「赤目不動」として号したのがその始まり。三代将軍・家光が鷹狩の途中に立ち寄り「目黒、目白不動と同じく、目赤と呼ぶべし」と現在の土地を与えたと言われています。御朱印も無事にいただくことができました。次の目白不動を目指して走り始めます。あと三寺、ちょうど折り返し地点です。

目白不動までは約5㎞、20分弱の道のりです。普段はロードバイクで比較的速めのペースで走ることが多いのですが、今回は電動自転車で狭い路地をのんびり走ります。街の景色がいつもよりも目に飛び込んできて、また違った愉しさがありました。

鬼子母神の参道のケヤキ並木です。目白不動がある雑司ヶ谷にはお寺や神社などが多く、夏目漱石や小泉八雲などの文人のほか、ジョン万次郎といった歴史的な人物も眠っています。

目白不動のお寺として知られる金上院の創建は1573~93年の天正年間の頃とされています。およそ200年の歴史を誇る山門をくぐって中に入ります。

階段上にある白壁の不動堂の中に秘仏の目白不動が安置されています。ごらんの通り目白不動には左腕がありません。背後に火焔(迦楼羅炎:かるらえん)があるのが不動明王の特徴、と先述しましたが、このお不動さんは人々を救うために自ら左腕を断ち、そこから火焔が噴き出しているという、かなり珍しい不動明王です。※画像はパンフレットを撮影した画像です。

御朱印をいただいて、目白駅まで走りランチにします。

外にテラス席が準備されていることから、目白駅近くのイタリアン「マックスキャロット」を訪問しました。近くの学習院大学の学生も訪れるそうで、皇族の方も愛用されていたとか。パリパリに焼かれたチキンがドンと乗ったチキンカレー(1000円)とガーリック風味がホワイトソースが特長のほうれん草とベーコンのグラタン(972円)をオーダーしました。学生に愛されているお店らしく、Mサイズでもボリュームは十分! しっかりとエネルギーを補給して次に向かいます。
※サイクリング途中の食事の方法についてはこちらを参照ください。

ランチの後、JR高田馬場駅近くのポートに自転車を返却し、目青不動の最寄り駅、東急田園都市線の池尻大橋駅まで電車移動です。今回はゆるい自転車ツアーとしているので、自転車の走行距離が10㎞を越える場合はすべて電車で移動します。

サイクルポートから目青不動がある教学院までは、自転車で10分ほどの距離です。

お寺は東急田園都市線「三軒茶屋駅」から徒歩2分ほどの場所にあります。応長元年(1311年)に創建され、そこから麹町、赤坂、青山と数回に渡る移転を繰り返し、明治時代に世田谷区に移設されました。

御本尊の不動明王像は秘仏となっていますが、不動堂に祀られている不動明王像は参拝可能です。

納経所で御朱印をいただき、いよいよ最後の目黒不動(⑥)を目指します。三軒茶屋駅からは約5㎞、15分ほどの距離です。

取材は気温が30度と高く蒸し暑い日でしたので、電車移動が多く運動量は少ないのですが、じんわりと疲労感が襲ってきます。ちょうどそんな時に目黒不動(瀧泉寺)に到着です。朱塗りの見事な山門が出迎えてくれました。

狛犬も感染症対策万全です。

水かけ不動(上の画像)のほか、阿弥陀堂、前不動堂など、広大な境内の中にいくつもの仏堂やお堂がある、見どころが多いお寺です。江戸時代から行楽地として賑わいをみせていたようですが、現在も大晦日、節分などでかなりの人出があるそうです。

鳥居の奥に見えるのが目黒不動が安置されている本堂です。こちらは関東で最古の不動霊場とされていて、創建は平安時代808年)。「目黒」という地名は、この目黒不動からついたと言われています。

この日最後の御朱印もいただきました。

御朱印はそれぞれにデザインがあり、5つも並ぶとありがたさを感じます。
新型コロナウイルスの感染はまだまだ先が見えませんが、感染させない、感染しないように十分に注意を払いつつ、これからも自転車の愉しみ方をご紹介していきたいと思います。