島や半島、湖などをぐるっとひと回りする「〇〇イチ」。サイクリストにとって、どこかを一周した経験はある意味で勲章みたいなものです。今回は三浦半島を一周する「ミウライチ」を愉しんできました!
"ミウライチ"をクルマと自転車で愉しむ。
海風とグルメを味わう「三浦半島一周」

関東屈指の人気ルート「三浦半島」
三浦半島は東京、神奈川のサイクリストにとって人気のサイクリングルートです。半島の東側には横須賀、浦賀、西側には逗子、鎌倉、南に行けば城ヶ島などの観光スポットが多数あり、海岸線のルートからは東京湾、金田湾、相模湾とそれぞれに異なる海の表情を眺めることができます。

半島の入り口からぐるりと一周することも、南の三崎口まで電車で行き、そこから走り出すことも可能です。いろいろな交通機関でアクセスができるので、自分の走力に合わせてそれぞれのサイクリストが思い思いのライドを楽しむことができるのも人気の秘密です。
横須賀にクルマをとめて、ライドをスタート!

今回は半島の入り口の横須賀までクルマでドライブを行い、そこからミウライチを走ります。2人分のバイクを積んでスタート地点の三笠公園に向かいます。

奥に見えるのが世界三大記念艦といわれる戦艦・三笠。三笠公園は記念艦の三笠の展示のほか、BBQや歴史散策などが愉しめる猿島への玄関口になっている横須賀のランドマークのひとつです。

三笠公園近くの駐車場で自転車を組み立てます。

今回、ミウライチを行うルートはこちらです。
①三笠公園
②たたら浜
③北下浦海岸
④宮川公園
⑤城ヶ島
⑥長者ケ崎
⑦湘南国際村
総走行距離約70㎞。獲得標高はおよそ980mと距離の割には上りが少し多めの走りごたえがあるルートです。⑦の湘南国際村に向かう上りは3㎞ほどあり、旅のクライマックスとして達成感も味わえます。

三浦半島を走るサイクリストのために「マイルストーン」が設置されています。設置されたのが2016年と比較的新しいものですが、ミウライチの目標として、さらには撮影スポットとして利用できるものです。設置されている場所の特性を活かしたデザインが施されているのが特徴で、全部で8か所設置されています。本当はすべて巡りたかったのですが、閉鎖され見られないところもあり、また全部回ると距離的にも長くなるため、今回は5か所のマイルストーンを目指して走ります。

さて自転車を組み立てスタート地点の三笠公園に向かいます。奥にわずかに見えるのが戦艦・三笠です・・・が、残念ながらコロナ禍で三笠公園は閉鎖中。フェンスの外側から記念艦を眺めてスタートします。

出発してわずは2分ほどですが・・・まずはライド前の糖質補給です。立ち寄ったのは横須賀市街にある、地元ではとても有名な中井パン店です。昭和を感じる昔懐かしい雰囲気のお店に、ひっきりなしにお客さんが訪れます。

購入したのは、お店の人オススメの2種類。食べた瞬間、青のりの香りが広がるちくわパン(左)は、ソースと紅ショウガがアクセントになって、まるでお好み焼きのような味わい。ポテチパン(右)は名前のとおりポテトチップスをメインに、コールスローがサンドしてあるシンプルなパンです。ポテチのサクサクの部分としんなりした部分、さらにはキャベツのシャキシャキ、パンのフワフワが相まって、具材がそれほど多くはないのにさまざまな食感が絡み合う複雑な味わい。古くから地元で愛されるメニューというのも納得できます!
しっかりとエネルギー補給ができたので、最初のスポット「たたら浜(②)」のマイルストーンまで、約9㎞のライドです。
最初のマイルストーンは「黒船」のデザイン

最初のマイルストーンはたたら浜(②)にありました。ペリーが黒船で来航したのがこの周辺ということから、それがデザインに採用されているようです。意匠はかなり精巧で蒸気機関から噴き出す黒煙までもが表現されていて、マイルストーンの奥に見える海と相まって迫力のある仕上がりになっています。

「黒船」を後にして、次は11㎞先のマイルストーンを目指します。ルートから常に海が見える訳ではありませんが、場所によっては海のすぐに脇を走るポイントもあります。こんな所を走れるのもミウライチの魅力のひとつ。それにしても海の色がきれい!

さて2つ目の立ち寄りスポットは、北下浦海岸通りのマイルストーン(③)です。例年1月~2月にかけて約100万本の水仙が咲くことから、水仙の意匠をもちいたマイルストーンが設置されています。

ちなみに・・・各マイルストーンに隣接する場所にはサイクルステーションが設置されています。そこにはバイク用の自転車ラックや展望デッキ、あずまやなどがあり、休憩スポットとして自由に利用が可能。ここまでマイルストーンはまだ2か所しか回っていないのですが、どちらもかなり景色のいいところにあり、休憩スポットとしては最適です。

水仙のマイルストーンを後にして約10㎞。海岸線を離れて、アップダウンが連続する丘陵地帯を進んだ所にあるのが宮川公園(④)のマイルストーンです。南側はすぐに海ということもあり風が強く、風力発電の風車が設置されている場所でもあります。
さて、ここのマイルストーンのデザインはマグロと大根です。三浦半島といえばマグロのイメージが強いですが、実は先ほど走ってきた丘陵地帯では大根の栽培も盛ん。古くは江戸時代から栽培されていて、冬の三浦ダイコンはこのあたりの特産になっているそうです。マグロと大根、まるで煮物のような組み合わせ・・・なんて食べ物を思い浮かべていると、すでにランチにはちょうどいい時間です。

巨大な風車に見送られながら、城ヶ島(⑤)を目指します。城ヶ島は三浦半島の南端に位置する島。遠洋漁業の基地として知られる三崎漁港のちょうど向かい側にあり、マイルストーンのモチーフにもなっていた「マグロ」で有名な場所です。
マグロと朝獲れしらすのランチタイム

いつもなら道の左右にマグロ専門店があって迷ってしまう、というほど活気に溢れている城ヶ島。しかしコロナ禍で開いていないお店も多く、少し寂しい雰囲気でした。そんな中でも元気に営業していた、新鮮なマグロとシラスで知られる「かねあ」さんにお邪魔しました。

朝に水揚げされたばかりという旬の生しらす、釜上げしらす、生のマグロ、づけマグロをオーダー。

新鮮さが際立つ生しらすは、風味がバツグン。滋味にとんでいて、まさにこの時ここでしか味わえない旬の味でした。もちろん、マグロも絶品! 少し疲れた身体にしみわたり、午後のライドもしっかり走れそうです。しかしここから天候が少しずつ悪化しはじめました。ぽつぽつと雨が落ちてきましたが走り続けます。あと残りは半分です。

城ヶ島から19㎞。長者ケ崎のマイルストーン(⑥)です。長者ヶ崎がある葉山町は、日本のヨット発祥の地ということで、モチーフはヨットです。天気が良ければ奥に富士山がキレイにみえたはずですが・・・今回は見えず。
降っていた雨もいつの間にかあがり、今回最後のマイルストーンがある湘南国際村に向かいます。研修のための宿泊施設や住宅街が広がる湘南国際村は、本来ならばあまりサイクリストにあまり関係のない場所。ただ3㎞ほど上れる坂道の上にあることから、このあたりを走るサイクリストに人気のルートになっています。

あまり交通量も多くなく、道幅も比較的広いのでヒルクライムには最適。ただし斜度10%を超えるポイントもありなかなか手ごわい坂道です。

標高にして150mほどを一気に駆けあがった先にあるのが、湘南国際村マイルストーン(⑦)です。周辺には約10万株のツツジが植えられていることから、ツツジがモチーフになっています。坂道の頂上にあるので、景色と解放感は最高です!

天気が良ければ湘南海岸、富士山、伊豆大島が一度に見られる大パノラマが広がるのですが、あいにくの天気でまったく見えず。ただし、天気が悪い中でも上り切った達成感もあり気分は爽快! 今度また上ってみたいと思える景色でした。
さてここまで上れば、横須賀までは下り基調のルートです。スタート地点の三笠公園付近まで戻ります。

クルマをとめてある三笠公園の途中、横須賀のドブ板通りにほど近い「ナッシングバットシュガー」に寄り道です。ここは米軍基地に勤務する米兵の故郷のレシピをもとに作り上げたアメリカンスイーツのお店。甘い香りがあたりに漂い、思わず入店してしまいました。

マフィンやプリン、シナモンロールなどは、ずっしりとした本格的な味。アメリカを感じさせつつも、日本人にも合わせた食べやすいテイストでした。少し買い過ぎたので、食べきれないものはお土産です。

電車などを使った輪行も自転車の愉しみ方のひとつですが、今回のように天気が悪くなった場合は、着替えなども用意できるので、クルマ×自転車のライドは旅を快適にしてくれます(食べきれなかったスイーツも持ち帰ることができますし)。
秋はサイクリングに最適な季節です。クルマ × 自転車で快適なサイクリングに出かけてみてはいかがでしょうか?
- 取材・構成:今 雄飛
- モデル:岡田拓海、丸山カレン