今回は山梨県甲府市へ。市街は甲府盆地の中央部に位置しています。戦国武将武田三代が栄えた場所として知られていますが、訪れてみると市街を山が囲まれており大地に守られているようでした。つくづく戦略的に選ばれた地形なんだなあと、かの時代に思いを馳せます。そんなわけで甲府の主要部から山岳まで非常にアクセスがよいのです。さらに良質な天然温泉がコンコンと湧出しており、ライド後のリカバリーに適しているのではないでしょうか。またブドウやモモといった特産物でも広く知られています。そして粉食文化に起源をもつ、この地域の栽培に適した穀物をおいしく頂く食文化も有名です。具体的には「ほうとう」や近隣では「吉田のうどん」ですね。こういったオイシイ特産物もサイクリストの好物といってもいいでしょう。
極めつけは都心からもアクセスが良く日帰りでも訪問しやすいという立地の良さもポイントが高いですね。まさにサイクリスト垂涎のシチュエーション。そこでサイクリストでライターの山本健一が、甲府だからこそ可能なお手軽ロングヒルクライムと、日帰り湯治ツアーのご提案をいたします。
秘湯を求めて甲府へ
絶景ヒルクライム付きの秘湯ライド


今回のスバルは、レガシィ・アウトバック Xブレイク。30年以上の歴史を刻み続けるレガシィシリーズの2022年モデル。SUVとしてのデザインと機能を際立たせたアクティブなクルマです。

力強い走行性能で、急勾配の峠もパワフルに駆け上ってくれました。室内空間のインテリアは落ち着きがあり、リラックスして運転に集中できます。日帰りのロングドライブもアイサイトの予防安全機能のおかげでセイフティドライブで帰路に着くことができました。
甲府からあの昇仙峡までわずか約13.2km
峠までのアクセス抜群な甲府市。どれくらいかというと、あの日本有数の特別名勝で知られる昇仙峡までわずか13.2kmという近さです。といっても標高720mまで駆け上がるヒルクライムなので走り応えは十分です。
甲府の冬は都心部と比べて冷え込みは強いですが、晴天率が高い上に積雪もそれほど多くはない場所。とはいえ日陰では路面凍結があるので、厳冬期のロード走行は十分に注意する必要があります。夏は反対に盆地特有の暑さが続きますが、標高の高い山間部は涼しくて走りやすい場所が多いといえます。しかしながら先述した地の利は、そういった環境を受け入れられる魅力があります。

甲府駅北口からスタートします。甲府駅北口からスタートします。「ある荷物」を積んでいくので、今回もフロントバッグと大きめのサドルバッグを装着しています。
甲府はヒルクライムの聖地?
甲府近郊にはいくつもヒルクライムに適した峠があります。甲府の坂道を探すためにNPO法人やまなしサイクルプロジェクト(YCP)が監修をする「百坂やまなしヒルクライム」というデータベースサイトの力を借りました。
このサイトは山梨全域の峠や坂を120箇所以上も掲載しています。実際に足を運び、見て走ったレポート記事が綴られています。

山梨の魅力をサイクリングを通じて広げる活動をしているYCPの皆さん。テキストからやまなし愛が溢れ出しています。
このサイト情報から「やっぱり日本遺産にも選ばれている昇仙峡でしょう!」と決定することができました。さらに直接向かうのではなく甲府を一望できる「みはらし広場」が人気の和田峠を経由するプランに。このようにエリアごとの地図から峠の経由ルートも作れるので、コース作りにも役に立ちます。
ということで昇仙峡の観光スポットまでのショートトリップを楽しみましょう。

白漆喰の清潔感のある空間でした。2階にもイートインスペースがあります。

酸味の効いたビターなエスプレッソと、レモンケーキで目を覚まします。
サイクリストの朝は早い! なのですが、それ以上に早朝営業しているカフェがありました。地域でも人気の「寺崎コーヒー」さん。出発前にエスプレッソとレモンケーキをしっかりといただいてから、という幸先の良いスタートです。早朝から立ち寄る常連さんも多いようで、スタッフさんの挨拶が途絶えません。
寺崎コーヒー 〒400-0031 山梨県甲府市丸の内1丁目20−22
営業時間は7:30〜18:00(月〜金)、10:00〜18:00(土、日)
駐輪する場合は店舗正面の所定の場所へ。
※コロナウイルス感染拡大防止のため営業時間が異なる場合があります。
甲府駅から一直線に北上していくと「昇仙峡」の案内看板がいたるところに。道は細くすでに上り基調です。まずは和田峠へ向かいます。峠の距離は短いですか、なにしろ急勾配。

千代田湖・昇仙峡の案内板がよい目印になります。
上りきる途中で息が上がってしまうとペースはどんどん落ちてしまうので、序盤は呼吸しながらでも会話ができるくらいの速度で走りましょう。
つづら折りの上りを進んでいくと、甲府の街が眼下にチラッと見えて標高を稼いでいる実感が湧いてきます。
みはらしの広場は和田峠の終盤にあります。ぜひ立ち寄って絶景を写真におさめておきましょう。

みはらしの広場は絶景の人気スポットです。夜景も綺麗とのこと!

この峠を象徴するような急勾配のつづら折り。
和田峠を上り切ると平地が突如現れます。
和田峠を上り切ると、とつぜん開けて平坦基調になります。すると湖が見えてきました。千代田湖です。農業用の人工池ですが、標高550mという高地にあり湖面の先には観音ヶ岳といった南アルプス山塊が見えるという独特の雰囲気を醸し出しています。なんでもヘラブナ釣りでも有名のこと。

千代田湖。貸しボートなどもあり、釣りとったレジャーも楽しめそうです。
この日は寒くて湖面の一部は凍結していました。
勾配が緩やかになり、下り坂も交えながら昇仙峡へ近づいてきます。路面状況もよくとても走りやすい道ですね。
千代田小学校を過ぎたあたりから、昇仙峡グリーンラインに入ります。勾配変化があり楽しい上り坂ですね。
山の側面を貫くトンネルが多くなっていきます。リアのライトの点灯を確認しておきましょう。


県営駐車場は無料で利用ができます。
途中に県営無料駐車場と売店・食堂があります。ここでトイレ休憩や小休止も可能です。足湯の看板もあり伺ったところ、現在は行っていないとのことでした(2022年2月8日現在の情報です)。

荒川の水流が長い時間をかけて侵食をして作り出したという壮大な時間の流れを感じる場所です。
この辺りから空がぐっと近くなった感じがします。勾配もキツくなり脚に疲労を感じ始めますが、つづら折りを抜けた瞬間に渓谷らしい息を呑むような絶景が広がります。
昇仙峡というと奇岩が知られていますが、登山家でなくてもロッククライミングしたくなってしまうようなダイナミックな渓谷が続きます。
こうした日常とかけ離れた風景を見ていると、ヒルクライムのきつさも忘れて楽しめるというものですので、頑張ってペダルを回しましょう。
上り切ると勾配が急激に緩くなります。しだいに観光施設も多くなって賑やかになります。

こうしたお立ち寄りスポットがたくさん出現します。ゴールが近い証拠です
昇仙峡ロープウェイのあたりで折り返します。うっそうとした林間部を抜けると宿泊施設や売店などが軒を連ねており、気持ちも軽くなりますね。
ここでは「百坂やまなしヒルクライム」のマスコットでもあるチャリたぬ君がお出迎えしてくれます。

日本五大名峡のひとつに数えられている特別名勝の地。登山や奇岩めぐりのために、改めて訪れてみたい場所です。

昇仙峡ロープウェイ前はのどかな渓流といった雰囲気。
復路は冒険心に従って
復路を同じ道で戻るのでは面白くありません。そこで県道7号「昇仙峡ライン」方面に下って行きました。こちらのルートは勾配が緩やかで、下りとしても見通しがよく走りやすいです。
実はこちら側のルートを上って行くと荒川沿いの奇岩や絶景を楽しめる「渓谷道路」を走って登れます。しかし繁忙期の5月〜11月には自転車通行はできませんので、あえて今回のルートを採用しました。こちらも新緑や紅葉の季節に訪れてみたいものですね。

御嶽天神社が目印。こちらの分岐を荒川沿いに上って行くと渓谷道路があります。

昇仙峡の玄関口、長潭橋(ながとろばし)。大正14年に竣工した最古のコンクリート構造のアーチ橋で、歴史的価値の高い建築物として知られています。現在は老朽化のため、架け替え工事が進められています。

緩やかな下り坂と、牧歌的な日本の原風景が続きます。
10kmほど下ります。市街地に近づくにつれ交通量も急増します。長い上りで効率良く体を動かし、下り坂で冷えてしまったら「癒し」が必要ですね。
甲府は指折りの温泉地として知られているように、市内には気軽に入れる入浴施設がいくつもあります。温泉郷なら確実に宿と温泉を楽しめますが、今回はローカルでディープな秘湯を探してみました。
新遊亀温泉(しんゆうきおんせん)

遊亀公園(現在は工事中)のすぐそばにある昔ながらの風情の新遊亀温泉です。路地裏にあるので自転車だと訪問しやすく便利です。駐輪場もあります。
いわゆる銭湯形式の温泉で、昭和の情緒が溢れすぎています。番台にはニコニコした女将さんが迎えてくれました。源泉かけ流しの源泉はライオンの口から湧いていますが、なんでも珍しい造形とのこと。泉質は琥珀色をしたまろやかなモール泉(植物起源の有機質を含んだ温泉)で、寒さで凍えた体が一気にほぐれていきます。
新遊亀温泉 〒400-0865 山梨県甲府市太田町11−5
営業時間は14:00〜22:00(火曜日定休)日曜日のみ7:00〜22:00。駐車場・駐輪場あり。
大人430円、中人170円、小人70円(税込)
※コロナウイルス感染拡大防止のため営業時間が異なる場合があります。
草津温泉(くさつおんせん)

そして国道52号沿いにある草津温泉は、戦後の昭和23年に現在オーナーの先々代が譲り受け営業を再開したという老舗です。昭和初期に草津出身の方が草津湯という銭湯を始めたのが始まり。甲府の中心部で温泉湧出に成功し、当時は高温の温泉が湧出したことが大きな話題になったそうです。その温度は現在でも47.7度! ぜひ挑戦してみてください(適温のお風呂もあります)。もちろん加温・加水なしのかけ流し天然温泉。泉質はラドン含有、芒硝、重曹、食塩泉で体の芯から温まります。露天風呂で堪能しました。
営業時間も変わらず続けているとのことで、多くのお客さんで賑わっていました。
草津温泉 〒400-0041 山梨県甲府市上石田1丁目10−12
営業時間は6:00〜22:00(1月1日のみお休み)。駐輪場・駐車場あり。
大人430円、中人170円、小人70円(税込)
※コロナウイルス感染拡大防止のため営業時間が異なる場合があります。

サドルバッグの中身、気になりませんか? 入浴用のタオル一式を積載していたのでした。
紅椿の湯(べにつばきのゆ)

奥湯村温泉の日帰り温泉である紅椿の湯は、まさに湯村温泉郷を抜けた住宅街の一角に構えています。日帰り温泉と食事を摂ることができる温泉施設でした。2013年から開業した施設で大小3つの大浴場と2つの露天風呂、サウナなど設備が充実しています。泉質はナトリウム・カルシウム – 塩化物泉で、低張性弱アルカリ性温泉。もちろん源泉掛け流しということで、大浴場で贅沢に温泉を楽しむことができました。休憩室やアカスリも受けられるので、きっと体も「トトノウ」でしょう。
奥湯村温泉 紅椿の湯 〒400-0071 山梨県甲府市羽黒町1520
営業時間は10:00〜20:30(平日、毎月第二火曜日は館内整備のため休館)
10:00〜21:00(土日・祝日)
駐輪場・駐車場あり。
大人750円、子供350円(税込)
貸切風呂1室 平日1時間3,000円(税込)、土日・祝日1時間3,500円(税込)
※コロナウイルス感染拡大防止のため営業時間が異なる場合があります。

煮干しのコクが豊かなしっかりとした味のつゆと、歯ごたえのよい吉田のうどん。そして迫力の角煮というベストバランスでした。
体を動かすにはエネルギーが必要です。迅速なカロリー補給に最適なうどんを食べることにしました。甲府といえばほうとうですが、吉田のうどんの人気店があるということで「うどん屋源さん」をお訪ねしました。とても人気でお店は満席。人柄の良い店主がボリューム満点のうどんを提供してくれます。なんといってもフォトジェニックで厚みのあるベーコンのような角煮が食欲をそそりました。つゆもみそ味と特濃にぼし味と選ぶことができ、トッピングも豊富。土日祝日はラーメンを営業しているなど、人気の秘密がわかりました。駐車場あり。駐輪可能。
うどん屋 源さん 〒400-0041 山梨県甲府市上石田4丁目5−3
営業時間 11:30〜14:00(平日・土曜、月曜日定休)
11:30〜15:00(日曜日)
※コロナウイルス感染拡大防止のため営業時間が異なる場合があります。
葡萄KOFU お土産やライド中のおつまみに

バリエーション豊富な6種類のレーズンサンド。山梨で採れたブドウを使っています。
甲府のお菓子といえば信玄餅など有名な銘菓があります。ですが新進気鋭の新定番として紹介されていた葡萄屋KOFUのレーズンサンドを今回はチョイス。
しっとりしたサブレーとクリームと山梨のブドウをたっぷりと使ったサンドは全部で6種類。いずれも優劣つけ難いテイストでした。駐車場あり。
葡萄屋KOFU 〒400-0031 山梨県甲府市丸の内1−1−25
営業時間 11:00〜17:30(無休)
※コロナウイルス感染拡大防止のため営業時間が異なる場合があります。
価格:
大吟醸レーズンサンド 216円(税込)
ラムレーズンサンド 216円(税込)
紅茶サンド 216円(税込)
こうふのまちレーズンサンド 216円(税込)
レーズンサンド(クリームなし)183円(税込)
レーズンバターサンド 183円(税込)

風光明媚な甲府市街地の様子
甲府は峠道や温泉などサイクリストの好物が豊富に存在するパラダイスのようなところでした。観光資源をサイクリングの目的とすると、幅広い遊び方ができそうです。みなさんのお近くの観光スポットへ車と自転車を使って遊びにいってみてはいかがでしょうか?
テキスト&写真/山本健一
サイクリスト、編集者、文筆家、イベントディレクター。若かりし頃は自身の可能性を求めてプロサイクリストを目指す。現在は経験を生かして、スポーツ自転車の素晴らしさを多くの人たちへ啓蒙することをライフワークとしている。最新機材の試乗インプレッションから、国内外のレース・イベント取材をはじめ、国内のイベントディレクションなど幅広くこの世界に携わっている。