クルマと自転車でめぐる歴史探訪シリーズの第3回はSUBARUのおひざ元、群馬県に数多く点在する"古墳スポット"をめぐる旅をご紹介します。
"SUBARU × 自転車" 歴史探訪シリーズ
古墳王国・群馬を自転車でゆく古墳巡りの旅

自転車を使った"墳活"ツアー

クルマと自転車を組み合わせれば快適さとスポーツの楽しさ、そして五感をフルに使ってその土地の魅力を味わうことができます。
今回は"古墳王国"と言われる群馬県の旅。現在、県内に8000基を超える古墳が確認されていますが、1万基以上が作られたと想定されています。関東・甲信地方では圧倒的な数を誇る群馬の古墳巡り、"墳活"を自転車で行います。

県内全体に大小さまざまな古墳が存在していますが、今回訪れるのは、前橋市の「大室古墳群」「金冠塚古墳」など、高崎市の「観音山古墳」、「大鶴巻古墳」、最後は「保渡田八幡塚古墳」です。全部をつなぐと50㎞くらい。もっと巡りたい古墳はたくさんありますが、1日かけて自転車で走りつつ古墳も満喫できる距離として、今回はこれくらいの距離設定にしています。
行き帰りに便利な前橋駅付近にクルマを止めて、早速走り出します。※前橋周辺についての過去記事はこちらから。
そもそも古墳とは、3~7世紀の古墳時代に高く土を盛って作られた墓のことを言います。大阪・堺市の仁徳天皇陵が有名ですが、北海道から九州まで、大きさも形もざまざまなものが現存しています。その中でも特に前方後円墳は、有力な豪族などが作ることを許されたものと言われています。
公園内に大小さまざまな古墳が存在

前橋駅から10㎞ほどのところにあるのが、大室古墳群です。日本キャンパック大室公園の中に大小さまざまな古墳が点在。散歩がてら古墳めぐりをすることができるスポットです。奥に見えるのが、かぎ穴のような形をしている前方後円墳の「前二子古墳」です。古墳に上ることもでき、全長148mというその大きさを体感できます。

こちらは隣にある中二子古墳。先に紹介した前二子古墳とは違い木々が生い茂っているため、一見、丘のように見えますが、深い堀があるほか、盾持人埴輪と円筒埴輪が古墳を守るようにぐるりと囲い、往時の様子が再現されています。

この公園は東京ドーム7.5個分もあるという広大で散歩コースとしても人気の公園です。中央には五料沼があり、その奥に赤城山が鎮座している姿を(天気が良ければ)見られるという、古墳だけではなく、景色も楽しめるスポットでした。
住宅街の中にある小さな古墳
さて次のポイントまでは15㎞ほどの道のり。しばしサイクリングを楽しみます。次の古墳は住宅街の中にある小さな古墳です。気が付かず素通りしてしまいそうなものが、実は歴史的な建造物だったという"意外性"が魅力の古墳といえるでしょう。

公園の丘に見えますが、「帆立貝式古墳」というホタテ貝のような形をした古墳です。この「亀塚山古墳」は直径が約40mという小型のもので、見過ごしてしまいそうなものですが、県指定の史跡になっている貴重なものです。

思わず撮影してしまった古墳近くの公園の遊具。古墳型になっているのが興味深いです。古墳王国"群馬"では、それくらい古墳が身近ということなのでしょう。

さて「亀塚山古墳」の近くには、もう一つ県指定の「金冠塚古墳」があります。通常の目線で見ると分かりにくいのですが前方後円墳で、全長は50mほど。6世紀後半の築造とされています。
上から見ると住宅地の中にポツンとあるのが分かります。こういう史跡を巡るのには、のんびりと走れてしかも機動力のある自転車が最適。走っていると"いきなり目前に古墳が出現"という体験が、自転車×古墳巡りの醍醐味のひとつです。
全長約100mの巨大古墳

続いては打って変わってスケールの大きい古墳をご紹介します。住宅街を後に市街地を抜けて30分ほど、高崎市にあるのが「観音山古墳」です。高さは約9m(ビル4階相当)あり、その迫力に圧倒されます。

また全長は97m。先ほどの住宅街の中の古墳と違い、開放感のある場所にあるため、より一層雄大さを感じます。

こちらの古墳も上ることができ、円墳の中腹にある石室ものぞき見ることができます。調査の結果、10数キロ離れた場所で産出した巨石を運んだものが使用されているとのこと。そのことから相当な有力豪族の古墳とされています。
今回は立ち寄れませんでしたが、近くに群馬県立歴史博物館があり、そこでは出土した埴輪や副葬品などが展示されています。
水田に浮かぶ大鶴巻古墳

ここからは利根川の支流である烏川を上流に向かって進みます。整備された川沿いのサイクリングロードはありませんが、交通量の少ない道が多くかなり走りやすいポイントが増えてきます。

少し走ったところに「大鶴巻古墳」が見えてきました。ここまで色々なタイプを見てきましたが、これは"水田に浮かぶ古墳"といったところでしょうか。金色に輝く稲の上に浮かんでいるように見えます。円墳の頂点に木々が生い茂り、"ラピュタ"のように見えなくもないですね。
地図で見るとまさに田んぼのど真ん中! 同じ前方後円墳でも、その保存のされ方の違いによって、まるで違った景色に見えるところも古墳めぐりの醍醐味といえるでしょう。

烏川には万葉集にも詠まれた「佐野の船橋」が架けられています。当時は川に浮かべた船をつないだ橋(船橋)で、現在のものと大きく違いますが、歌を詠みたくなるほどの情緒は変わらず。ちょっと急ぎ気味で走ったこともあり、ちょうどいい寄り道になりました。
まるでピラミッドのような八幡塚古墳

さて、今回の最終地点が「保渡田八幡塚古墳」です。画像の八幡塚古墳のほか、周囲には二子山古墳、薬師塚古墳もあり、ここで丸一日過ごせるほど見どころが多い古墳群といえるでしょう。それぞれ約1500年前の豪族が埋葬されているとされ、いずれも全長約100mの巨大な前方後円墳。特に八幡塚古墳は、広大な二重の堀をめぐらし、周囲には多数の埴輪が並べられています。
上空から見るとその壮大さに驚かされます。内堀には4つの祭祀場が復元され、鉢のような形の円筒埴輪が6000体も並べられています。

堀の上には人物埴輪や動物埴輪などが配置され、往時の雰囲気を漂わせています。

表面に葺石(ふきいし)が施され、これまで見てきた古墳とはまったく違った姿を見せています。この葺石は装飾の意味合いのほか、土砂の流出を防いで構造的に強度を高める効果もあるようです。

このすき間なく積まれた葺石のため、角度によってはピラミッドのように見えます。埋葬されているのは古代の毛野国(けのくに)の豪族・毛野氏と推測されています。まだはっきりと分からないというのもロマンをかきたてられるところ。

ひらけた場所だけではなく、住宅地や水田の中など、場所によってさまざまな表情を見せる古墳。なにせ全国に16万基以上あるので、ランドマークとして自転車で巡るには最適です。わざわざ出かけるのもよし、いつものサイクリングコースの近くにないか探してみるのもよし、「自転車×古墳」の墳活してみませんか?
- 取材・撮影/今 雄飛(こん ゆうひ)