クルマと自転車でめぐる歴史探訪シリーズ。今回は"家康"にフォーカスしている企画の後編です。家康が幼少期、晩年を過ごした駿府(現在の静岡市葵区)とその付近のスポットを走ります。
"SUBARU × 自転車" 歴史探訪シリーズ
"家康"の足跡をめぐる駿府の旅・後編


前回は家康の青壮年期を過ごした"浜松"を走りましたが、今回はその後編として、幼少期と晩年を過ごした駿府を紹介します。
家康が晩年過ごした駿府をめぐる

浜松からはクルマで1時間ほど。まずはスタート地点の駿府城を目指します。
今回めぐるスポットは以下の4か所です。
1.駿府城
2.久能山東照宮(くのうざんとうしょうぐう)
3.三保の松原
4.三保灯台
ルートとしては海岸線を多く走る旅になります。この"海岸線"については後ほど紹介しますが、千葉県銚子市から和歌山市まで続く「太平洋岸自転車道」の"一部"を走ります。

今川氏の全盛期と言われる9代目、義元の時代、家康は19歳になるまで人質として駿府で生活していました。この幼少期にさまざまなことを学び、戦国大名として活躍する際において重要な時期であったと言われています。

さて19歳になり駿府を出た家康は、前回紹介した浜松城に入城。数々の戦いを経て、1586年、43歳の時に再び駿府に戻りますが、数年をこの地で過ごしてすぐに江戸へ。改めて戻ってきたのは、関ケ原の戦いを経て"大御所"となった1605年です。
駿府城に天守は残されていませんが、二ノ丸の東に位置する東御門、巽櫓(やぐら)は復元され、当時の勇壮な姿を思い起こさせます。

取材時、天守跡は発掘調査中。明治時代に本丸堀が埋め立てられ、廃城になる前、かつて天守が建っていた正確な跡地を割り出すために調査を行っているとのこと。あまり見ることができない石垣の様子が確認できる機会なのでご興味のある方はぜひ!

駿府城は城郭そのものの価値も高いのですが、"江戸時代に初めて作られた城下町"としても高い評価を得ています。当時は清水港まで通じていた水路があるなど、城を超えて都市としての魅力をも感じさせる場所でもありました。
海に面した太平洋岸自転車道

さて次のスポットは駿府城から南東に10㎞ほどのところにある「久能山東照宮」です。自転車で南下して駿河湾を眺めながら海岸線を進みます。

さて先ほども少し紹介しましたが、しばらく走るのは「太平洋岸自転車道」です。愛知県の伊良湖岬から三重県の鳥羽市まで一部フェリーの区間はありますが、全長約1400㎞の道がつながり自転車で走ることができます。

1400㎞すべてが自転車専用道路ではありませんが、この画像の地点のように車道と歩道が区切られているルートもあり、かなり走りやすくなっています。朝とは打って変わって雨がちな天候ですが、この海岸線のルートには信号が少なく、気持ち良く走ることができました。
家康を祀る山の上の東照宮

しばし走ると見えてくるのが久能山東照宮です。将軍職を2代目秀忠に譲った後も大御所として実権を握っていた家康ですが、10年ほどの間駿府で過ごした後、1616年に75歳で亡くなります。「遺体は久能山に安置せよ」という本人の遺言どおり、この東照宮に埋葬された、とされています。※諸説あります。

久能山東照宮は標高約216mの久能山の山頂にある神社です。九十九折りに続く石段を上っていくか、ロープウェーでいくかのふた通りの行き方がありますが、あえて今回は石段を上って行くことにしました。

石段の数は全部で1159段あります。木々の中を黙々と上っていくと駿河湾を見渡せる高台に到着。画像の地点まで15分ほどですが、ここからさらに5分ほど上ります・・・。元々、今川家が築城した久能山城があった場所ということもあり、守りは強固ですね。

なかなかの上りごたえでしたが、ようやく山頂に近づき見えてきたのが重要文化財「樓門(ろうもん)」です。門には色彩豊かに描かれた獏(ばく)や狛犬が据えられ、絢爛豪華な姿を見せています。

樓門をくぐると徳川家康が祀られている「御社殿」に到着。これは特徴的な様式で作られていて「本殿」と参拝をするための「拝殿」を連結した「権現造り」と呼ばれるものです。日光東照宮にも見られる様式です。

極彩色に彩られた木鼻(きばな)には吽形の獅子が飾られています。この美しさを保つため50年に1度大改修が行われているとのこと。また本殿などのほか、家康が所蔵した世界最古の機械式時計や、甲冑なども展示されるなど、見どころ多数のスポットでした。
今回は徒歩で上りましたが、ロープウェイ(有料)なら山頂までは約5分。ロープウエイを使っても、バイク用のシューズだとちょっと厳しいので、もし参拝する場合はスニーカーを準備することをオススメします。
旬の桜えびでエネルギー補給

上ってきた石段を下り切り、太平洋岸自転車道を東に向かいます。次の目的地は富士山世界文化遺産に指定されている「三保松原」。天候が回復してきているので、"絶景"を期待しつつも、ここで腹ごしらえを行います。
選んだのは桜えびのかき揚げです。走った時期はちょうど秋冬の旬にあたる時期。サクッとあがった衣に包まれた桜エビは新鮮で、甘さが口の中に広がります。旬の食材のありがたみをお腹に満たして、この日最後の絶景ポイントに向かいます。
日本初の名勝地、三保松原

三保松原がある三保半島は静岡市清水区にあり、海岸の約5kmが松林で覆われています。この一体が「三保松原」と呼ばれている地域になります。海岸と松原越しに見える富士山の景色が、日本初の名勝に指定されています。"絶景"を期待しつつも、ここで腹ごしらえを行います。

写真や動画などでは例の景色を見たことがありますが、実際に見るのは初めて。かなり膨らんだ期待を心に抱きながら、松林を抜けて富士山に臨む海岸線に出ます。"絶景"を期待しつつも、ここで腹ごしらえを行います。

しかし・・・晴れてはいるものの、富士山は雲の中でした。予想するに点線のあたりに富士山があるようですが、この日はまったく見えませんでした・・・。昼前まで降っていた雨の影響もあるのでしょうか。世界文化遺産の絶景は次に訪れる際への持ち越しです。

残念な気持ちを引きずりつつではありますが、三保松原を後にして最終目的地、半島の先端近くにある「三保灯台」を目指します。このあたりはかなり海に近いところに太平洋岸自転車道が通っていて、海風を感じながら気持ちよく走ることができます。

さてこれが三保灯台です。この灯台は1912年、明治時代に建設されたものですが、今も現役で清水港に入港する船舶の目印になっています。
日本初の鉄筋コンクリート製の灯台という点、さらに現存する中でも最古のひとつという貴重さが認められ、国の重要文化財に指定されました。今見てもまったく古さを感じない平面八角形のデザインはシンプルで美しく、眺めていると自転車の自分も出迎えてくれているような気持ちになりました。

さて今回は2回に渡り、家康に関係したスポットを巡りました。静岡県は歴史的な建造物もたくさんあり、しかも自然が豊か。まさにクルマと自転車で走るには最適なスポットです。家康関連以外にも歴史的なスポットもまだまだたくさんあるので、また歴史探訪をしてみたいと思わせられる場所でした。
- 取材・撮影/今 雄飛(こん ゆうひ)