すばる
富士重工業の期待を担って開発されたP-1でしたが、その中でも最も大きな期待を持って見守っていた人の1人に、初代社長の故北謙治がいました。北は自動車に関して一家言持っておりました。 それは、”自動車を作るなら本格的なものを作れ”ということと、”国産自動車には日本語の名前をつけるべきである”ということでした。ですから本格的な乗用車P-1についての関心は人一倍大きかったのです。
P-1の呼称を社内募集しようというのも北の発案でしたが、応募されたものは”坂東太郎””パンサー””フェニックス”などどうも思わしいものがなく、結局北自身が心の中に抱き続けてきた美しい日本語”すばる”と命名したのです。
”すばる”というのは牡牛座にある散開星団、つまり星の名前です。肉眼で見える星の数は6個から7個ですが、望遠鏡で見ると約250個の青白色星の集団です。西洋名プレヤデス、中国名昴(ぼう)、日本ではすばる、六連星(むつらぼし)とも呼ばれ、古事記、万葉集、枕草子などといった古い書籍にもその名前は散見します。富士重工業は五つの会社が一つに統合したことの意味を持つ、なかなかの命名でした。