ボーイング社もお手本にするSUBARUの製造技術
離陸後、安定飛行に入ると、株式会社SUBARUの吉永社長あいさつVTR、SUBARUとJALの技術者による航空技術のプレゼンテーション、CAのSUBARU⾞試乗インプレッションのVTR放映が行われました。
株式会社SUBARU 航空宇宙カンパニー 技術開発センター研究部長 齋藤義弘 氏によるプレゼンテーション。
787の最大の特長は、機体の約50%に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用することで軽量かつ滑らかな形状となった事。
これにより空気抵抗が少なくなり、低燃費で効率的な航空機が実現。
これは旅客機製造の在り方を変えるような変革である事から、その呼び名「ゲームチェンジャー」が付いたそうです。この「ゲームチェンジャー」という言葉が非常に印象的でした。
旅客機は上空高度で空気の薄いところを飛ぶため、機内に気圧をかけます。
これまでは富士山の5合目くらいの高さに相当する気圧をかけていました。787は機体強度が上がったことで、3合目くらいの気圧までに気圧を上げることを実現できました。
すなわち、室内の気圧をより地上近くに設定できるようになったので、耳づまりが緩和されたり、疲労感が少なくなったりと、不快感を和らげることに成功したそうです。
室内の湿度は25%と通常の旅客機よりも高く設定されています。
地上ならちょっと乾燥気味な数値ですが、従来の機内湿度は一桁台が当たり前、カラカラ状態だそうです。
787は高湿度が保持できるようになったことで長時間のフライトでもお肌が乾燥しづらく、女性には嬉しい環境を実現できたそうです。
▲ツアー配布資料
さて、本題に入りましょう。
飛行中、飛行機の胴体は重力によって下方向に引っ張られます。空気の力が翼に作用することで機体が空中に持ち上がり飛行します。
空気の力が主翼にかかった時、翼の端は地上の時と比べ、最大約3m上方向にたわみ、約500トンの力が作用します。
この“たわみ”をしっかりと支えるのが中央翼。左右の翼と前後の胴体を繋げる役目をしています。中央翼は箱のような形状で上部は中部胴体の床面、後部は主脚収納部、内部は燃料タンクとなっています。縁の下の力持ちとも言えるとても重要な部分です。SUBARUはこの中央翼の設計・製造に関わっていて、最新鋭の技術が詰まっています。
一番分厚い部材は100枚以上のシートを積み重ねており、飛行機が最も厳しい飛行状況下で作用する力の4倍程度の力が作用しても壊れないよう設計されています。むやみやたらに補強するのではなく、余計な肉は削ってメリハリをつけ、素材を目的に応じて適材適所使用して、とことん考え抜いた設計を施しています。
例えば、構造同士を繋ぐ約2万本のボルトは、1本1本すべて強度計算し、求められる機能性能を満たしているかを確認した上で使用しています。また、部品の厚さは0.3ミリ以下、ボルトの直径は0.1ミリ以下、穴とボルトのはめ合いは100分の1ミリ以下の精度でコントロールしています。更には内側の燃料タンクは漏れないように何重にもプロテクションをかけ、万が一雷が当たっても大丈夫なように特別な設計とされています。
▲ツアー配布資料
CFRPやチタンなど高性能だけれど機械で加工するのが難しい素材が使用されています。毎月12機分、年間約150機分を製造しており、相当量のボルト穴を開けます。通常のドリルではすぐダメになってしまいます。SUBARUでは、独自の機能性・耐久性に優れた高性能ドリルを開発し使用しているとのことです。
航空機の製造工程ごとに作業を記録、検査、確認し、それをさらに記録していくということも徹底されています。これは、製造後工程の追跡調査ができるようするためです。
「安全性」や「品質」を徹底的に追求している姿勢こそ、航空機メーカーの時代から引き継がれているDNAと齋藤氏はお話されていました。