メカニズム
スバルR2の透視図
スバルR-2のメカニズムには、ミニカーの先進メーカーとしての富士重工の技術的良心が、すみずみまで結集されています。 当時、わが国のモータリゼーションは、いろいろな意味で新しい段階を迎えていました。特に走るものとしての自動車本来の面から、ただ速く走れば良いというばかりでなく、より安全に快適に走る車の登場が期待されるようになりました。 スバルの技術スタッフは、スバルR-2を造るにあたって、こうした時代的要求をいちばん重視しました。いいかえれば新しい時代の新しいミニカーの機能はどうあるべきかを追求したのです。
駆動システム リヤエンジン・リヤドライブ
スバルR-2の駆動システムは、R.R.方式でした。R.R.方式は、当時の軽自動車のサイズ制限の中で、スペース配分の面からも、駆動効率の面からもミニカーに最も有利なレイアウトでした。
このためスバルR-2は、居住性、性能ともに軽乗用車の中で群を抜いていました。
また、R.R.車としての走行安定性を高めるため、ステアリングシステムやサスペンションシステムにあわせて前後輪まわりの重量配分は、バランス良く設計されていました。
ステアリング・システム ラック&ピニオン式
スバルR-2シリーズの、ステアリングは、ラック&ピニオン式でした。これはステアリングシャフト先端のピニオン(小歯車)とラック(歯を刻んだ棒)を噛み合わせて走行車輪を動かすもので、切れが良いところから小型のスポーツ・タイプ車に多く用いられている方式です。
ところで、いくら切れが良いからといって、据切りが重かったり、高速走行時に軽すぎたりというのでは操縦性、安全性に影響を及ぼすばかりでなく、ドライバーの疲労度も大きくなって好ましいものとは言えません。
スバルR-2の場合は、独特の足回りの設計によって、旋回時に生ずる車輪の荷重移動を利用して車輪の回転軸(つまりキングピン)の方向を変化させることができました。だからスバルR-2のステアリング方式は、据切り、低速時には軽く、高速時には操舵力が軽すぎない、理想的なものだったのです。
サスペンション・システム セミ・トレーリングアーム式4輪独立懸架
スバルR-2セダンのサスペンションは、前後ともに独特のセミ・トレーリングアーム式の独立懸架を採用していました。これにトーション・バー、オイル・ダンパーを組み合わせることであらゆる走行条件下での安定した走行とすぐれた乗心地を生むことができました。
SSの場合は、フロントにロール剛性のすぐれたトーションバー式スタビライザーを新たに採用したり、オイル・ダンパーの減衰力を増すなど足廻りを一段と強化しました。さらに車高を低くしラジアル・タイヤを標準装備するなどの成果として、このクラス随一のすぐれたロ-ド・ホールディングを得ていました。
スバルR-2 SSのフロントサスペンションとリヤサスペンション
エンジン・システム 強制空冷2サイクル2気筒
エンジンは強制空冷2サイクル2気筒です。このエンジンは、当時、すでに10余年にわたってスバル360で実証された、定評あるエンジンをベースに、新たに吸気方式にリードバルブ式を採用するなど、スバルR-2のために設計された新エンジンでした。
このエンジンは、ミッション、デファレンシャルとの一体機構になっていたので、軽量・コンパクトでしかも故障が少なく、ミニカーに最適なエンジンでした。
エンジン性能は、総排気量356cc、最高出力30ps/6,500rpm、最大トルク3.7kg-m/5,500rpmの高出力で、しかも低速から高速までフレキシブルな性能を発揮しました。また、潤滑方式にはエンジンの耐久性維持にすぐれた性能を発揮する、スバルの技術陣が独自に開発したスバルマチック(完全分離潤滑方式)が採用されていました。
エンジン透視図
後年、これに水冷エンジンがラインナップに加わりました。
スバルR-2カスタムLとスーパーLに搭載された水冷エンジン
排気量 356cc 最高出力 32ps/6000rpm
最大トルク 4.1kg-m/5000rpm 圧縮比 6.5
ミッション 前進4段フルシンクロ 後退1段
ミッションは、前進4段フルシンクロ、後退1段でした。このため、エンジンの出力を使用条件に応じてフルに活用することができました。また、シフト方式はフロアシフト式ですから、加減速時の変速操作はスムーズに行なうことができました。
クラッチ・システム ダイヤフラム
クラッチ・システムは、ダイヤフラム式です。低速から高速まで、軽く一定した踏力が得られ、つながりもなめらかでシフトチェンジの楽しさを大きくしました。
ブレーキ・システム リーディング・トレーリングブレーキ
スバルR-2には、前後輪ともに安定性の高いリーディング・トレーリングブレーキを採用していました。カタログ・データでは制動距離11m。高速でも安定した制動力を発揮し、確実でバランスが良い上、放熱効果もきわめて優れていた。
ボディ モノコック構造
スバルR-2のボディは、軽量で室内スペースが広く、しかもねじれやたるみに強いモノコックボディを採用していました。
これは、かつての中島飛行機、富士重工が航空機技術を生かしてスバル360に採用したものをリファインした、きわめて合理的な面構成から成り立っていました。そのため、スバルR-2 SSは、総合性能の目安となる馬力当たり重量でもこのクラスのトップを占めていました。