スポーツバイクを安心して楽しく走らせるためには、外出先でのトラブルに対応できる知識が必要ですよね。今回は予防も含めたメンテナンスの情報をご紹介していきます(全3回)。
ロードバイク女子が学ぶ 外出先で困らないためのメンテナンス講座 その1
トラブル対処方法を知っていればライドはさらに愉しくなる
軽快な走り心地、流れていく景色、目的地で食べるグルメなど、スポーツバイクで外を走ることは愉しいことがたくさんあります。しかし外出先でのアクシデントやメンテナンスの状況でトラブルが起きてしまうのも事実です。それを心配して、遠出できないのはかなりもったいないこと。
事前にチェックを行い、さらに出先でのトラブルへの対処方法をマスターしていれば、心配ごとも減ってより愉しく走れます。
そこで初心者ロードバイク女子の丸山かれんさんをモデルに、彼女自身も不安に思っている出先でのトラブル対処方法をマスターしていただきました。コーチ役は多くの初心者ライダーにトラブル対策をレクチャーしてきた神奈川県藤沢市のバイクショップ「BFY」の店長、加藤 司馬さんです。では、よろしくお願いします!
まずは乗車前のチェックから。
加藤:「外出先のトラブル対応」というテーマではありますが、走り出す前に自転車の各部をあらかじめチェックしておくと、外出先でのトラブルを減らすことができます。クルマと同じですね。具体的にはボルトのゆるみ、タイヤの空気圧の確認など、ほんの数分でできることなので忘れずにチェックしておきましょう。
丸山:ロードバイクに乗り始めたばかりなのもありますが、乗る前に自転車のチェックをしたことはないですね・・・。
加藤:もちろん毎回ボルトのゆるみを気にする必要はありませんが、空気圧のチェックは毎回しておいた方がいいですよ。さっそくチェックする箇所を紹介していきましょう。
加藤:まず確認してもらいたいのが、前後のクイックリリースです。クイックリリースは簡単にホイールが外せる機構ですが、手軽な反面、締め付けがゆるかったり、ホイールがきちんとはまっていない人も多く見られるポイントです。
丸山:電車で移動する「輪行」をしたことがあるんですが、前後のホイールを着脱したのですが、でもあまり上手くできた気がしません(笑)。前輪は大丈夫なんですが、特に後輪は難しくて。
加藤:ホイールの着脱に関しては次の機会にレクチャーしますので、ここではまずクイックリリースがしっかり締まっているかを確認してください。※ホイールの着脱方法は、次回の「その2」で紹介予定です。
加藤:次は各部のボルトのゆるみを確認します。はじめはハンドルから。フロントタイヤを脚で挟んで、ハンドルを上から押さえつけます。次に左右に動かします。ハンドルは乗車中に体重がかかるポイントなので、しっかりと確認します。
加藤:もしハンドルが動いてしまう場合は、アーレンキー(六角レンチ)を使用してボルトを締めていきます。扱いやすい自宅用(左)と別にコンパクトな携帯用(右)があると、外出先でも使用することができて便利です。
加藤:ハンドルを上から押して動いてしまうときには、ハンドルを支えているこの部分のボルトを締めていきます。
加藤:ハンドルが左右に動く場合は、フレームとハンドルをつなぐ「ステム」というパーツのボルトを締めます。
加藤:サドルはペダリングの際に大きな力が加わるので、ゆるみが大きい部分です。左右にひねって回らないか、抜けないかを確認します。
加藤:サドルが左右に回ってしまう場合は、サドルとフレーム本体をつないでいる部分、シートポストが緩んでいます。写真にあるフレームのクランプ部分のボルトを締めていきましょう。
加藤:クランプ部分のボルトを締めてもまだガタつきがある場合は、シートポストとサドルをつないでいる部分が緩んでいる可能性があります。
加藤:ボルトではないのですが、ブレーキも重要なポイントです。ハンドルについている左右のブレーキレバーを握ってみて効きが確かかを確認します。
丸山:こんなにチェックするポイントがあるんだな、というのが正直なところですが(笑)、これからはしっかり確認したいと思います。
タイヤは地面と接する重要な部分。空気圧の管理をしよう
加藤:ここまでボルトのゆるみチェックをしてもらいましたが、実は出先のトラブルのほとんどがタイヤ周りで起こります。具体的にいうとパンクですね。パンク修理の方法は知っていますか?
丸山:いや、分からないです。幸運なことにまだパンクしたことがないので・・・。
加藤:それはマズいですね(苦笑)。グループで出かけたときは誰かが助けてくれる可能性がありますが、一人で出かけたときにパンクしたら帰ってこられないですから。パンクはタイヤにしっかりと空気が入っていれば発生を防止できる可能性があがりますので、乗る前には必ず空気を入れましょう。
丸山:空気が入っているとパンクしにくい、っていうのはどういうことですか? 尖ったものが刺さりにくくなるんですか?
加藤:尖ったものが刺さってパンクする以上に段差などに乗り上げた際、中のチューブが傷ついてパンクすることが多いんですよ。チューブ傷が原因のパンクはタイヤに空気が入っていれば防ぐことができるので、空気圧の管理が重要になってきます。一般的なものと違って、スポーツバイクのバルブは少し特徴的な形状なので、空気の入れ方をレクチャーしていきます。
加藤:このような細身のバルブがついたチューブを「仏式バルブ(フレンチバルブ)」と言います。一般的なママチャリについているのは「英式バルブ」、オートバイなどに使用されているのは「米式バルブ」です。スポーツバイクのは仏式バルブの使用割合が多くなっています。それでは空気を入れるはじめの手順として、バルブの先端のキャップを反時計回りに回して外します。
加藤:次に先端の部分「バルブコア」を反時計回りに緩めます。ここを緩めることで、空気の通り道ができます。
加藤:次に仏式バルブに対応した空気入れで空気を入れていきます。バルブに先端に口金を押し込みますが、先端部分は曲がりやすいので慎重に行いましょう。
加藤:口金をセットしたら指定の空気圧になるまでポンピングします。スポーツバイク用の空気入れにはメーターがついていることが多く、空気圧の管理はしやすくなっています。空気圧の適正値ですが、私は体重の10分の1気圧をおすすめしていますが、これはあくまで目安。大体、7気圧入っていれば問題ないと思います。
加藤:空気を入れ終えたら、空気入れの口金を外してバルブコアを時計回りに締めて、キャップを取り付ければ終了です。
丸山:今までは空気圧のチェックをかなり怠っていたので、これでパンクが防げそうです。
加藤:先ほども言いましたが、空気圧は毎日チェックしてください。ボルトのゆるみは2週間に1度など定期的にしていただければ十分ですので、安心していください(笑)。
- 加藤 司馬(かとう かずま)さん/神奈川県藤沢市のバイクショップ「BFY」店長。「自転車技士」「自転車安全整備士」「公認スポーツ指導者 自転車コーチ」の資格を持つ、自転車のスペシャリスト。
- 丸山果恋さん/コミュニティラジオ局「渋谷のラジオ」で「渋谷自転車部」のパーソナリティーをつとめる初心者ロードバイク女子。
- 協力:バイクショップ「BFY」