スポーツバイクを安心して楽しく走らせるためには、外出先でのトラブルに対応できる知識が必要ですよね。今回は予防も含めたメンテナンスの情報をご紹介していきます(全3回)。
ロードバイク女子が学ぶ 外出先で困らないためのメンテナンス講座 その3
パンク修理に必要な“三種の神器”を準備する
前回はパンク修理の段階として必要な「ホイールの着脱方法」を紹介しました。いよいよ今回はパンク修理の方法を紹介します。
加藤:パンク修理に必要なものは、①携帯ポンプ、②タイヤチューブ、③タイヤレバーの3つです。この3点は自転車で出かけるときにバックパックなどに入れて必ず携帯しましょう。チューブは傷がつきやすいので、商品パッケージから出してラップなどで巻いて保護しておくといいですよ。
丸山:パンク修理といえば、チューブに貼り付ける"シールのようなもの"をイメージするんですが、あれは使わないんですか?
加藤:よくご存知ですね! それは「パッチ」と呼ばれるチューブの穴に貼って修理するものです。それを使って修理してもOKなのですが、出先で行うのは時間がかかってしまいます。チューブをまるごと交換してしまうのが早くて効率的。今回は"外出先でのメンテナンス"というテーマなので、チューブ交換の方法をレクチャーしていきます。
まずはパンクの原因をチェックする
自転車のパンクの原因は「段差に乗り上げてチューブが傷つく (※連載その1参照)」「突起物が刺さる」、この2つがほとんどです。自転車に乗っていてパンクに気がついたら、まずはホイールを外して原因を調べていきます。
丸山:すぐにチューブを交換するのはだめなんですか?
加藤:"段差が原因"の場合はチューブ交換をするだけで問題なく復帰できます。でも"突起物が原因"の場合はタイヤにそれが刺さったままになっていることもあるので、その状態でチューブを交換してもまた同じようにパンクしてしまうことがあります。そのため原因をチェックする必要があるのです。
加藤:まずはタイヤの表面を見ながら突起物が刺さっていないかを確認します。ここで注意してほしいのがタイヤの表面を手でなぞって確認しないこと!
丸山:そのほうが手の感触で分かりやすいんじゃないですか?
加藤:ケガをするかもしれないのでやめましょう。タイヤを貫いてチューブまで達してしまうくらいなので、かなり固くて尖っている可能性があります。以前自分もつい触って確認したことがあるのですが、手を切ってしまったことがあります。まずは目視で確認して、刺さっているものが見つかったら取り除いておきます。ただし、突起物がタイヤを貫通して内側に飛び出て外側からはみつけられない場合もあります。その場合はチューブを取り出してから、突起物を取り除きます。
タイヤを外してチューブを引き出す
加藤:次にタイヤレバーを使って、ホイールにはまっているタイヤを外していきます。カットモデルを使って説明しますが、ホイールのくぼみにタイヤの「ビード」と呼ばれる部分がはまっているので、それをタイヤレバーで外していきます。ビードにタイヤレバーを引っかけて引き起こすイメージで作業していきます。
加藤:タイヤレバーは通常2~3個がセットになっているので、ひとつレバーを入れたら15㎝ほど離して次、さらに次と引き起こしていくと、あとはスルスルとタイヤ(ビード)が外れていきます。
加藤:片側のビードがすべて外れたら、"バルブを刺したままの状態で"タイヤ内側のチューブを引き出して少し膨らむくらい空気を入れます。チューブに空気を入れると空気が漏れるので、穴があいている部分が特定できます。
加藤:穴があいている位置が特定できたらタイヤと重ね合わせます。その周辺にパンクの原因になった突起物がある可能性があります。
加藤:念のため、この部分のタイヤの表側も確認します。何もなかった場合は、内側に飛び出た突起物を探していきます。この際も直接手で触らないようにしましょう。
新しいチューブに交換して、タイヤを装着する
加藤:突起物を取り除いたら、穴のあいたチューブを取り外して新しいチューブを入れていきます。
加藤:新しいチューブを入れる際には、少し膨らむくらい空気を入れておくと形を保ってくれるので作業しやすくなります。
加藤:タイヤをすべてタイヤの内部に入れ込んだら、タイヤをホイールにはめていきます。タイヤを奥に押し込んでビードをホイールの内側に入れていきます。
加藤:左手でタイヤとホイールをおさえて、右手で押し込むのがコツです。ビードがはまったら次、はまったら次と少しずつホイールを回しながら押し込みます。
加藤:最初のうちは簡単にはまっていくのですが、最後の20㎝くらいが固くてはめにくくなるとと思います。そんなときには、指ではなく親指の付け根(母指球)の部分を使うと力が入りやすくなるので試してみてください。
加藤:最後までビードが入ったら、最後にエアポンプで空気を入れます。携帯用のポンプはサイズが小さく力が入りにくいため、外出先ではガードレールや壁などにホイールを立てかけるとしっかり力を入れてポンピングができます。携帯用ポンプのゲージで、適正な空気圧になるように空気を入れれば、パンク修理の行程は終了です。
丸山:手順は分かりましたが・・・これもホイールの着脱と同じく練習が必要ですね。
加藤:そうですね。これも2~3回繰り返して練習するとコツがつかめると思います。実際のパンクは出先で作業することになります。現地で困らないように、ホイールの着脱から事前に練習して、確実にできるようにしておくといいですよ。
丸山:ありがとうございます。これからは自信をもって出かけられそうです!
- 加藤 司馬(かとう かずま)さん/神奈川県藤沢市のバイクショップ「BFY」店長。「自転車技士」「自転車安全整備士」「公認スポーツ指導者 自転車コーチ」の資格を持つ、自転車のスペシャリスト。
- 丸山果恋さん/コミュニティラジオ局「渋谷のラジオ」で「渋谷自転車部」のパーソナリティーをつとめる初心者ロードバイク女子。
- 協力:バイクショップ「BFY」