初めてロードバイクを購入するとき、多くの人が10〜20万円台のエントリーグレードと呼ばれるロードバイクを選んでいます。エントリーグレードはコストを抑えながらも、ロードバイクならではの加速感や爽快感を味わえるモデルですが、パーツを少しだけカスタマイズするだけで、グッと性能が高まり、走れるフィールドの幅が広がることはご存知でしょうか? 今回は、初めて手にした完成車を、限られた予算3万円という中で、効果的にカスタマイズしていきます。
予算3万円! はじめてのロードバイクアップグレード(前編)
予算3万円!ビギナー自転車女子が愛車をアップグレード
今回、愛車をカスタマイズするのは、ここ数年話題の自転車アニメを観てロードバイクに興味を持ち、2020年7月にロードバイクを初めて購入した山田真白(ヤマダマシロ)さん。そのバイクは、今回カスタマイズするラピエールの「センシウム500」です。エントリーグレードとしては充実のスペックで、購入価格はおよそ25万円でした。
これまで、今回カスタマイズをお願いする千葉県松戸市のショップ「シクル・マーモット」が主催の走行会にも何度か参加。そんな山田さんは、近い将来100〜150km程度走るロングライドイベントにも参加したいそうです。
そこで、「シクル・マーモット」の馬場善久店長に、3万円という限られた予算の中で効果的なカスタマイズをしてもらいました。
「今のロードバイクは、エントリーグレードでも完成度が高くて、特別パーツをカスタマイズしなくても満足して乗れます。でも、少しだけパーツを交換することで走りを変えることができますし、より長距離を走れるようになり、走行性能を高められればレースなども視野に入ってきます。」と馬場店長はアドバイスします。今回は、山田さんが望む、本格的なロングライドに向けた仕様へとカスタマイズ!
費用対効果が高いタイヤを目的に合わせてアップグレード
まず、エントリーグレードのバイクの場合、“足回り”と呼ばれるホイールとタイヤをアップグレードすることで、走行性能を格段に高めることができます。そのため、はじめにカスタムしたいパーツです。
「エントリーグレードの場合、ホイールやタイヤは、完成車全体の予算を抑えるため、コスト重視のモデルが標準装着されていることが多いです。そのため、これらのパーツを性能の高いモデルに交換することで加速性能や乗り心地を高めることができます。回転部分のパーツであるホイールは、軽くて剛性が高い高性能なモデルに変えることでバイクの性能は高まりますが、予算がホイールだけで10万円前後と一気に膨れ上がるので、今回の3万円の予算であれば、まずはタイヤの交換をおすすめします。それだけでも十分に性能を高められます。」
山田さんの愛車に装着されていたのは、コンチネンタルのエントリーモデル「ウルトラスポーツ」(3,630円)。通勤や通学には向いているモデルですが、アップグレードすることでグリップ力が向上し、転がり時の抵抗低減による走行性能が高まります。
「本格的なロングライドにオススメのモデルとして、サイドカットなど耐パンク性に強く、路面をしっかり捉えるグリップ力が高いモデルを選ぶと良いでしょう。高性能なタイヤは、登坂性能を重視した軽量なモデル、悪路や長距離走行を想定した耐久性の高いモデル、全ての性能を高次元でバランスを取ったオールラウンドモデルの主に3タイプに分かれています。軽量モデルは、漕ぎ出しが軽くなる一方で、耐久性はさほど確保されていないモデルも多いため、今回は軽さというよりは、安心できる高いグリップ力と耐久性のバランスを意識したヴィットリアの「ルビーノ プロ・コントロール」を選びましょう。
高性能なタイヤは、1本で1万円以上するモデルもありますが、こちらは1本4,500円なので2本で9,000円です。はじめてのアップグレードタイヤとして、コストパフォーマンスの高いミドルグレードと言えます。」と馬場店長はアドバイスします。
完成車に装着されていたコンチネンタルのエントリーモデル「ウルトラスポーツ」(3,630円)から1本4,500円のヴィットリアの「ルビーノ プロ・コントロール」へチェンジ。路面とコンタクトするパーツであるタイヤは、バイク全体の走行性能を大きく変えます。値段以上に効果的なカスタムパーツです。
隠れたお手軽アップグレードアイテム
タイヤだけでなく、インナーチューブも低予算で性能を高められるアップグレードパーツです。タイヤと合わせて一緒にカスタムすることで、走行性能を一気に高めらます。
「インナーチューブは高性能なモデルでもおよそ1本1,000円前後なので、初心者でも気軽にカスタムできるパーツではないでしょうか。表には現れませんが、走行性能には大きく影響します。オススメのモデルは、ブリヂストンから展開されている「エクステンザ・ライト」です。1本67g(48mmバルブ長)の軽さながら、942円とコストパフォーマンスも高いですね。消耗品ではあるので、お手頃価格は大切です。」
また、廉価なチューブと高性能なチューブでは、軽さ以外の部分でもオススメできるという。
「完成車に装着されているチューブの多くは、重いだけでなく、チューブの素材自体にムラがあり、抵抗を生み出してしまいます。インナーチューブだけ膨らませた時、安いチューブは真円にならずムラができやすいです。価格や重量だけのスペックだけでは見えない部分です。」
元々のチューブ(右)と今回のチューブ(左)を持ち比べてみる山田さん。軽さの違いだけでなく、チューブの厚みの違いに驚いていた
チューブ自体が肉薄なので、折り畳んでもコンパクトでかさばらない。予備チューブとしてサドルバックなどへの収納もスムーズだ
本格的ロングライドに欠かせないライトの選び方
バイクのカスタマイズといえば、性能の向上に注目がいきがちですが、本格的なロングライドを想定した時、まずは安全装備が大事です。
「100kmを超えるようなロングライドになると、丸1日走ることになります。場合によっては真っ暗な中で走ることも想定されます。そこで、周囲を明るく照らしてくれる高輝度ライトが欠かせません。選ぶ時、明るさの指標になる輝度が500ルーメン以上のものがおすすめです」
今、山田さんのバイクに装着されているライトは、キャットアイの「アーバン」と呼ばれる入門用ライトのド定番モデルで、価格は2,200円と手ごろです。ただし、あくまで街中を想定したライトなので、日が落ちた地方の田舎道やサイクリングロードなど真っ暗な場所では明るさがやや足りません。
「アーバンは50ルーメン(=800カンデラ)です。今回アップグレードとして選んだモデルは、最大500ルーメンです。つまり単純に10倍の明るさがあります。私もブルベ(=制限時間内に定められた距離の完走を目指す長距離イベント)に参加しているため明るいライトにはこだわりがありますが、500ルーメンは、これからロングライドを本格的に始めようとする人におすすめです」
写真左)フロントライトは、「レザイン」の「HECTO DRIVE 500XL」(5,478円)。値段はこれまでのライトよりも2倍以上するが、その分明るさを確保。カバーを外せばUSB充電プラグからダイレクトに充電できる
写真右)改良を重ねた独自のボディ構造で防水性と固定力を高めたキャットアイの「タイト」(2,750円)。LED5個使用して高輝度を確保。使用時間は最長180時間の長寿命を誇る
これまで使っていたライトも装着して、ダブルライトスタイルにすればより明るさを確保できる
自転車アニメにハマってロードバイクを始めた山田真白さんの愛車のアップグレード。まずは走行性能に大きな影響を与えるタイヤとインナーチューブと、ロングライドに欠かせない前後ライトのアップグレードを行いました。ここまでかかったカスタム費用は、合計20,012円(税込)でした。残り予算は1万円弱。次はどのあたりをカスタムしていくのでしょうか。後編もお楽しみに!
江戸川サイクリングロード沿いのプロショップ
シクル・マーモット 馬場善久 店主
関東圏のサイクリストに人気の江戸川サイクリングロード沿いにお店を構えるスポーツバイク専門プロショップ。首都圏のスポーツバイク専門のチェーン店勤務を経て、2010年に千葉県松戸市内にお店をオープン。2020年6月には、江戸サイ沿いに店舗を移転。お店の2Fにはお客さんが利用できるスペースがあり、インドアトレーニングの体験環境も整っている。
店主の馬場さんは、2019年にブルベ最高峰の「パリ〜ブレスト〜パリ」(4年に一度、フランスで開催される1200kmのブルベイベント)を完走する健脚の持ち主。また、フランスで人気のグランフォンド(山岳ロングライド)イベントである「ラ・マーモット」にも何度も参加。マーモットはアルプス高山地帯に生息する小動物。店名のシクル・マーモットは、そこに由来する。
SHOP DATA
千葉県松戸市松戸2160-2-101
お店のホームページ
http://marmotte.server-shared.com
*営業日については、お店のホームページやSNSをご確認ください